予防治療

口の状態を把握し、リスクをコントロール

口の状態を把握し、リスクをコントロール

予防と治療は車の両輪であり、切り離せないものです。現在の日本の保険制度では予防と治療は分かれていますが、臨床の現場では予防を踏まえた治療が当たり前です。大切なのは、常に自身の口の中の状態を把握しリスクに備えること。そして、そのリスクをコントロールしてくれるかかりつけ歯科医院を持つことです。
歯科医では、正しい歯磨き指導やフッ素塗布、再石灰化を促進する特定健康品の推奨など、さまざまなアプローチで患者さまに寄り添います。ぜひ定期的な口腔チェックを生活に取り入れていただき、自身の口の中に責任を持って予防に努めていただきたいと思います。

予防のポイント

  • 乳児期にむし歯菌に感染させないようにしましょう
  • 酸性飲料をできるだけ減らしましょう
  • 正しい歯磨き習慣を身につけましょう
  • フッ化物配合の歯磨剤を使用しましょう
  • 定期的にかかりつけの歯科医院でチェックを受けましょう

むし歯治療

生活習慣を踏まえた原因を見極める

生活習慣を踏まえた原因を見極める

むし歯は、痛いところをただ治すという治療ではなく、その原因を考えることが大切です。しっかり原因を見極める診察と、それを踏まえた治療法の選択、メンテナンスまでのフォローが治療の一連の流れとなります。当院では診察段階で、場合によっては唾液の検査を行い、ばい菌の量や口腔内の酸性度合いを調べます。
しかし、最も原因を見極める上でヒントとなるのは、その人の生活状況です。日常どんな食生活を送っているか、歯ブラシの習慣はどうかなど、口の中の状態はある程度生活習慣を問診することである程度把握することができます。

現在主流のむし歯治療とは?

むし歯の治療は、技術と材料の進歩によりレベルアップしています。いま主流となっている治療は、歯質や歯髄への犠牲を最小限に抑え、本当に悪くなったところだけを削除して修復するやり方です。
また、脱灰(口腔内の菌が出す酸により、歯の表面のエナメル質が溶けた状態になってしまうこと)を抑えることで初期のむし歯なら修復が可能となります。そのために必要なアプローチは歯科医院でアドバイスを受けることができます。

歯周病治療

自覚症状が出てからでは治療が困難になることを知ろう!

自覚症状が出てからでは治療が困難になることを知ろう!

歯周病とは、歯を支えているまわりの組織に起きる病気です。歯垢(プラーク)の中の歯周病菌が歯肉に炎症を起こし、歯を支えている骨(歯槽骨)を溶かしてしまうのです。
歯周病は「サイレントディジーズ=静かに進行する病気」と呼ばれ、症状が進行するまで自覚症状がないことで知られています。自覚症状を感じたときはすでに進行した状態が多く、そうなってしまっては根本的な治療ではなく、さらなる進行の予防と状態の改善しかできません。
また、歯周病は細菌感染による病気ですが、糖尿病や高血圧などと同じ生活習慣病といわれ、不適切な生活習慣によって発症しやすくなります。さらには狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・糖尿病など、全身のさまざまな疾患に関わっていることも指摘され、解明されつつあります。歯周病の治療は生活を見直すことでもあるため、患者さまの協力は欠かせないのです。
一番の予防は、自覚症状がなくても、かかりつけ医で定期的な検診を受けることです。なるべく早期の発見と改善を心がけてもらいながら、治療に入った場合は、生涯を通じた健康づくりに欠かせない課題であることを理解しましょう。

歯周病を防ぐ生活上のポイント

1. 毎日のセルフケアを確実に! ①毎日の歯磨きで上手に歯垢(プラーク)を除去しましょう。
②歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助用具を使った清潔なお口を保ちましょう。
2. 定期的にプロフェッショナルのケアを受ける! ①かかりつけの歯科医院で行う専門的なケアで、歯垢や歯石を取り除きましょう。
②セルフケアのチェックと指導を受けましょう。

歯周病のサインは?

  • 歯茎のふちが赤い
    歯周病の初期段階は歯肉が炎症を起こす歯肉炎です。炎症を起こすと歯茎のふちが赤くなります。歯茎の腫れが目立つ、歯を磨いたときに出血するなどの症状があれば歯周病を疑いましょう。
  • 歯石が目立つ
    歯垢(プラーク)が石灰化すると歯石となります。歯石は歯磨きでは取り除けません。
  • 起きたときに口の中がネバネバする
    歯磨きが不十分だと歯垢がたまって、口の中がネバネバすることがあります。夜寝ている間は口の中に水分や栄養が豊富にあり、歯周病原細菌の活動が活発にもなります。
  • 歯が長くなった
    歯を支える骨が溶けると歯茎が下がって、歯が伸びてきたように感じることがあります。
  • 指で押すと歯が揺れる
    歯を支える骨が溶け始めると、歯が浮いたような感じになったり、指で押すとぐらぐらしたりすることがあります。この段階になると、かなり歯周病は進んでいます。
  • その他の症状として
    歯磨き時に出血する。口臭が気になる。硬いものが噛みにくい、食物が詰まるなどの症状です。

噛み合わせ

噛み合わせを正しくすることで全身が活性化する!

噛み合わせを正しくすることで全身が活性化する!

噛み合わせが悪いと、本来の歯の役割や機能が十分に発揮されません。上下の歯が正しく噛み合うことで、しっかりと食べ、美味しくきちんと食事をとることができます。
歯はお互いに支え合って機能しているため、きちんと歯が噛み合っていない、歯を失ったまま放置している、歯並びが悪い状態などが長く続くと、ほかの歯やあごにも負担がかかります。その結果、あごに痛みが出たり、頭痛や肩こりが起こりやすくなることもあるのです。
噛み合わせは咀嚼をはじめとする、さまざまな機能と結び付く場であるととともに、全身への影響、さらには認知症など脳にも顕著な影響を及ぼします。
よく噛むことは単に食べ物を体に取り入れるためだだけではありません。全身を活性化させるのに大変重要な役割を担っているのです。

顎関節症

慢性的な病気と向き合い、痛みと機能の改善を第一に

顎関節症は、あごの関節周辺に何らかの異常があり、「関節のまわりが痛い」「口が開けづらい」「口の開け閉め時にカクカクする」といった症状を伴う慢性的な病気です。
顎関節症は多くの因子が関連した疾患であるため、その発症や持続に関与する因子を特定して、可能であればそれらを除去もしくは改善して治癒を促進し、その後の管理を適切に行うことが大切です。顎関節症の治療目標は、患者さまの抱える痛みと機能改善に向けられ、治療の第一選択は保存的、可逆的な治療が行われます。

歯の欠損について

失った歯を人工的に補い、豊かな生活を取り戻す

失った歯を人工的に補い、豊かな生活を取り戻す

歯の喪失・欠損は、噛む・食べる・笑う・話す・くいしばるといった、お口の機能低下による日常生活への支障を生みます。歯科医では、この欠損部を人工的に補う治療を行います。欠損した歯の部位や本数、噛み合わせの関係にもよりますが、入れ歯・ブリッジ・歯の移植・インプラントの、いずれかの方法、あるいはこれらの組み合わせで修復します。
それぞれの治療法には必ずメリットとデメリットがあるので、どの治療を選択するかは慎重に決める必要があります。あくまで最終手段としての解決策なので、本来はこのような処置をする必要がないよう、口腔内のケアを定期的に行うべきだということを忘れないでください。
しかし、健康な食生活、人とのコミュニケーションなど、豊かな生活を取り戻すためにも、当院で患者さまの思いと希望に添えるさまざまな治療を用意しています。場合によっては口腔外科的な処置が必要なこともあります。不安な点、不明な点については遠慮せず、納得できるまで相談してください。

取り外し可能な義歯による治療

部分入れ歯

数本の歯を失っている場合、部分入れ歯によってその欠損部を補うことができます。クラスプと呼ばれる金属で人工歯を両隣の歯に固定するため、取り外しが可能です。また、審美性を考慮して金属クラスプを用いない方法もあります。

総入れ歯

不幸にしてすべての歯を失ってしまった場合、総入れ歯で治療します。総入れ歯は、人工の歯を取り付けた義歯床を、歯肉(歯茎)やその周囲で直接支えます。

固定式の治療

ブリッジ

1~数本の歯を失った箇所の両隣の歯を支えにして、歯の欠損部を補う方法です。両隣の歯をいくつか削って支台とし、そこに一体型の連結冠をかぶせます。連結冠はセメントで支台に固定されるので、取り外すことはできません。

歯の移植

歯を失った場所に自身の余っている歯(親知らずなど埋まっている歯)を移植して利用する方法です。

インプラント

むし歯や歯周病、外傷によって歯を失ったり、先天的に歯がなかったりする場合に歯がない部位のあごの骨に人工の歯根を埋め込み、固定式あるいは取り外し式の義歯を取り付けて欠損部を補う治療法です。

〈インプラント治療のメリット〉
義歯の固定においてインプラントは最も優れた方法です。歯を失った部分にインプランを埋め込むので、残っている周囲の歯に負担をかけずに治療を行うことができます。

〈インプラント治療のデメリット〉
インプラントを埋め込むための手術を受ける必要があるため、全身状態がよくない場合には適用が難しいことがあります。治療期間が長く、健康保険が使えないので費用も高額となります。
また、天然の歯に比べると感染に弱いことも挙げられます。さらに、埋入部位の骨が痩せているなど、十分な骨量がない場合、治療が困難になることもあります。

矯正歯科

矯正歯科

不正咬合のほとんどは、摂食、咀嚼、嚥下など、お口の機能を下げます。さらに、発語、呼吸、姿勢といった機能の異常にもつながり、健康な生活を脅かすものでもあります。矯正治療は、あるべき位置あるいは正常に噛み合わせられるよう歯を整えることで、歯並びから食べる機能まで考慮した一連の治療です。

早期治療(1期治療)

乳歯列期、混合歯列期に、歯列咬合の基盤となるあご骨を正常化させ、お口の機能をはじめとする全身の機能を調和させて噛み合わせを改善する治療です。問題に早期に対応することで、最小限の治療で済むことがあります(学齢期の歯列育成を参照)。

2期治療

永久歯列期以降に固定式装置を用いて歯列咬合を整え、お口の機能を調和させる治療です。固定式装置は基本、ワイヤー矯正を採用していますが、目立ちにくい素材を使った装置もあります。

限局矯正治療

主に、永久歯列が完成した後に行う治療法で、歯列全体ではなく数本の歯だけを動かす矯正法が限局矯正治療です。一部、歯の移動を行い、治療が完結できる場合もあれば、補綴治療(入れ歯、ブリッジ)を行う前処理として行うこともあります。
また、歯周病の治療では、歯の出っ張りなどを整直することにより骨の欠損を改善できる場合があります。健康な口腔内を保つには、歯垢がたまりやすくなる場所の改善も時に必要です。歯とその周囲の組織が調和している状態を取り戻すことで予後がよく、同時に見た目のきれいさと機能の回復が得られるのです。