高齢期における口腔機能の維持・向上

健康的な生活を送るために
欠かせないお口の健康

健康的な生活を送るために欠かせないお口の健康

むし歯や歯周病は、歯を失う確率を高めます。歯の喪失に伴い十分に噛めなくなると、唾液の分泌が減少したり低栄養状態を招きます。さらに身体機能の低下や肺炎のリスク増加にもつながります。
多くの調査や研究結果から、歯が20本以上あると何でも噛んで食べることができ、噛める人ほど運動能力が高いこともわかってきました。一方で、しっかりとした噛み合わせが少ない認知症高齢者は転倒しやすいということもいわれています。健康的な生活を送るために欠かせないお口の健康を、いつまでも保ち続けたいものです。

お口が健康であれば、
運動能力も高まります

噛む・食べる・話す・笑う・食いしばる・呼吸するといった歯とお口の機能は、充実した日常生活を過ごすために欠かせません。歯とお口を清潔にして本来の機能を保っていくことで、よく噛んで食べることができれば運動能力や筋力の向上につながります。また、たくさん笑ってコミュニケーションをとることで認知症予防にもつながります。肉体的にも精神的にも、そして社会的にも長く健康に生きるために、かかりつけ医での定期メンテナンスを継続していきましょう。

訪問診療

外来通院が困難な方への対応

訪問診療は、要介護高齢者など通院や医療機関への搬送が困難な場合に、在宅や施設で歯科検診が受けられるものです。近年、ニーズは高まっており、当院でも積極的に患者さんの訪問診療を行っています。
疾患を放置すると、やがて歯を失い、咀嚼をはじめとする口腔機能の低下を招きます。これらを回復させることは、食べる楽しみなどQOLに関係し、全身の健康と生命予後に影響します。また、要介護高齢者における口腔清掃状態の悪化は、誤嚥性肺炎の原因にもなるので定期的なチェックが必要です。終末期においても、自らの口で食べるための歯科的対応は生きる力を大いに発揮させます。外来通院が困難であっても、治療をあきらめないことが大切です。

訪問診療の対象者

要介護者や高齢者の中でも、認知や身体に障がいのある方、あるいは脳梗塞などによる後遺症のある方は主に訪問診療が対象となります。口腔ケアという側面からQOLを高めることは可能です。歯科医としてお役に立てることがありますので、ご心配のある方はお気軽にご相談ください。

周術期口腔ケア

抗がん剤や放射線による治療は、口腔の粘膜に炎症が起こし、痛みや出血、味覚障害、嚥下障害などの発症リスクを高めます。炎症が進むと食事がほとんどとれなくなり、体力や免疫力が低下。感染や発熱を起こす上、唾液腺がダメージを受けると唾液の分泌が少なくなり、むし歯や歯周病が急激に悪化します。

現在、高齢者に限らず、主に外科的な大きな手術を受ける際は、治療前や開始後に専門的口腔ケアを行うことが主流です。口腔粘膜の炎症の重症化に予防効果があり、肺炎といった術後合併症の減少、早期離床、早期経口摂取の開始、入院日数の短縮など、さまざまなメリットがあるからです。医療費や治療費の削減にもつながり、国の推奨を受けて広く浸透しているのです。

担当医師からの指示があれば、ぜひかかりつけ歯科医で口腔ケアを受けてください。もちろん、日頃からのセルフケアと定期的なケアを怠らないようにすることが、最も大切です。